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自社ツール 2026.07.29

存在しない天然石の標本を作れる「LAPIDARIUM」を公開した
——天然石ジェネレーター制作記

執筆:神吉 修平(ALDONIX 代表/Webディレクション歴100件以上・兵庫県高砂市)

「存在しない天然石を作る 石らしさは質感で決まる」——天然石ジェネレーター制作記のイラスト
ブラウザで天然石の標本を作って集められる無料のツール「LAPIDARIUM」を公開しました。
ボタンを押すたびに、8種類の形と色・質感の組み合わせから新しい石が出てきます。
9本のスライダーで調整して、棚に24個まで納め、標本カードの画像として保存できます。
石らしく見せるための質感の作り方と、生成AIで実写風に仕上げる方法も書いています。

目次

  1. 作ったもの
  2. まず「掘り出す」を押す
  3. スライダーで追い込む
  4. 蒐集棚と標本カード
  5. 石らしさをどう作ったか
  6. AI仕上げの使い方
  7. まとめ

「同じ石は、二つとありません。」——画面の隅に、そう書きました。

天然石には前から興味があって、先日、見たこともない石が表紙になった天然石特集の雑誌に出会いました。それがきっかけで、ブラウザの中で天然石の標本を掘り出すツール「LAPIDARIUM」を作りました。

作ったもの

LAPIDARIUM(ラピダリウム)は、ブラウザの上で天然石の標本を作って、眺めて、集められる無料のツールです。インストールも登録も要りません。スマホでも動きます。

天然石は、もともと身近な素材です。当社で取り扱っているコアフォースの製品にも、ラピスラズリやブラックスピネルといった天然石が使われています。ただ、あの雑誌の表紙のような「同じものが2つとない」石との出会いは、また別の体験でした。それをブラウザの中に作りたかったんです。

ボタンを押すと、石を「掘り出す」。スライダーで石を追い込む。気に入ったら棚に納めて、図鑑のような標本カードとして画像で保存する。やることはそれだけです。ただ、作っていた時間の大半は「石らしさって何だろう」を考える時間でした。

ベージュのスタジオ背景に立つ、緑から赤へ色が移るバイカラーの柱状結晶2本。LAPIDARIUMの初期標本「紅碧晶」
初期標本の単結晶「紅碧晶 Rhodothaline」。ツールの「画像保存」で書き出した1680×1120のPNG。写真ではなく、リアルタイムの3D描画です

まず「掘り出す」を押す

「✦ 掘り出す」を押すたびに、新しい石が出てきます。形の8種類(単結晶・群晶・母岩付き・磨き石・丸玉・針入り・庭園水晶・立方晶)と、色と質感の組み合わせが乱数で決まります。仕組みとしてはガチャですが、出てくるのはレア度の順位ではなく、名前のついた一点ものです。

この記事のために6回掘ったら、紅梅葡萄玉、琥珀華、宵蒼石、宵菫黄金輝石、琥珀藤玉、瑠璃藤輝石が出ました。銘(めい)は自動で付きます。和名は色の言葉の組み合わせ、洋名は鉱物の名前の語尾(-ite / -ine / -yst)をまねていて、Rosametyst のような「ありそうで実在しない」名前になります。この銘を眺めているだけで、僕はけっこう満足してしまいました。気に入らなければ「銘を練り直す」。自分で入力してもかまいません。

すべての石はシード(乱数の種)から作られていて、同じシードなら同じ石が再現されます。ただ、掘るたびにシードは変わるので、同じ石は二度と出ません。「再結晶」は、同じ設定のまま結晶し直すボタンです。出てくるのは、同じ性質を持った別の個体。機能の名前は、できるだけ鉱物の言葉に寄せました。

スライダーで追い込む

偶然に任せるだけでは終わらないようにもしています。色相2本とゾーニング(単色/バイカラー/縞)、色の深さ、透明度、内包物、条線(じょうせん・結晶の面に走る筋)、歪み、結晶の伸び。全部で9本のスライダーで、頭の中にある石へ寄せていけます。母岩(ぼがん・結晶の土台になる岩)付きなら、母岩の色も5種類から選べます。

照明は、暖色・寒色・暗室・洞窟の4種類から切り替えられます。洞窟にすると、真っ暗な空間に、一本吊りのスポットライトだけが石に落ちます。本物の洞窟は、光源が1つか2つと、岩肌の反射でできている。そう観察して作ったので、博物館の展示室のような見え方になります。

照明を落とすと、ツールの画面ごと暗くなります。展示室の照明を落とせば、部屋も暗くなるので。

洞窟照明に切り替えたLAPIDARIUMの画面。暗闇の中でスポットライトが結晶を照らし、UI全体も暗いテーマに変わっている
洞窟の照明。画面のテーマも照明に合わせて暗くなります。標本カードだけは、どのテーマでもクリーム色の紙のまま

蒐集棚と標本カード

気に入った石は「棚に納める」。棚には24個まで並べられて、押すと石が完全な形で戻ってきます。縮小した画像を保存しているのではなく、シードと設定から同じ石を再生成しているんです。保存先はブラウザの中(localStorage)で、当社のサーバーには何も送っていません。

LAPIDARIUMの全画面。針入りの赤い結晶が表示され、下部の蒐集棚に6個の石のサムネイルと銘が並ぶ
この記事のために6個掘って納めた棚。表示中は針入りの「紅梅葡萄玉 Rosametyst」

「標本カード」を押すと、図鑑のようなカードになります。標本番号、銘、硬度、比重、晶系(しょうけい・結晶の形による分類)、光沢、劈開(へきかい・決まった方向に割れやすい性質)、産地、日付。1080×1640の画像で保存できるので、スマホの壁紙やSNSの投稿にそのまま使えます。X(Twitter)へのシェアボタンもあって、銘入りの投稿文が開きます。画像は「画像保存」で保存してから添付してください。

紅梅葡萄玉の標本カード。結晶の画像の下に、硬度モース6.7・比重3.92・三方晶系・ガラス光沢・劈開なし・産地メレラニ鉱区などの項目が図鑑風に並ぶ
紅梅葡萄玉の標本カード(1080×1640・トリミングなし)
NOTE

カードの産地・硬度・比重などは、石の設定値から作った演出上のフィクションです。メレラニ鉱区にこの石は埋まっていません。実在の鉱物との同定もしていません。このツールで作れるのは「トルマリンのような柱状の結晶」で、トルマリンではありません。

石らしさをどう作ったか

作りながら1つ決めたことがあります。石らしさは、形ではなく質感で決まる。六角柱を立てて色を塗っただけでは、どう見ても鉱物になりませんでした。作っては直すうちに、CGっぽさの正体は、だいたい質感の嘘だと分かってきました。

手がかりは3つありました。翡翠の奥に光が透けるような表面下での光の散乱。水晶のきらつきを作る、屈折と分散。そして、実写をもとにした環境光。どれか1つが欠けると、とたんに作り物に見えます。

実装はthree.js(r184)によるWebGLで、外部の3Dモデルは使っていません。形もテクスチャも、すべてその場で計算して組み立てています。質感は物理ベースのマテリアルの設定に置き換えていて、「透明度」のスライダーは透過(transmission)へ、「色の深さ」は光が石の中で吸収される量へ、という対応です。屈折率は1.62に固定して、宝石でいうファイア(分散)も少し入れました。

色のムラは頂点ごとの色で塗り分けていて、縞は高さとノイズのしきい値、内包物は3Dノイズによる乳白色の混ぜ込みです。条線の凹凸や磨きのムラは、Canvasでその場で描いたテクスチャ。磨き石の表面をよく見ると、磨きは意外と均一ではありません。その観察を、ツヤのムラ(roughnessMap)としてそのまま入れています。母岩付きは、変形させた球体に光線を飛ばして、着地した点に結晶を植えています。このあたりは書き出すときりがないので、このくらいで。

AI仕上げの使い方

本当は、ツールの中のボタン1つで、実写のような画像まで生成したかったんです。ただ、それには画像生成AIのAPIを組み込む必要がありそうで、無料で公開するツールとしては見送りました。

「AI仕上げ」のボタンは、橋渡しに徹しています。1024×1024の下絵の画像と、石の設定から自動で組んだプロンプト(ポジティブ/ネガティブ)を書き出すところまでが、このツールの仕事です。撮影はこちらで済ませたので、現像はみなさんにおまかせします、という分担です。

形と構図と色は3Dが決めて、AIは質感だけを足す。

実際に、母岩付きの群晶をChatGPTで仕上げてみました。下絵を添付して、構図と色はそのままで実写の鉱物標本の写真に、と頼んだだけです。結晶の本数も配置も色の移り変わりもほぼそのままに、質感だけが実写になって返ってきました。これは少し驚きました。

AI仕上げ用の下絵。黒い母岩から青から緑へ色が移る柱状結晶が6本伸びる3Dレンダリング 同じ構図の実写風画像。灰色の岩から半透明の青い結晶が伸びる鉱物標本写真のような仕上がり
左:書き出した下絵(リアルタイムの3D描画)。右:ChatGPTで実写風に仕上げたもの。形と構図は3D、質感はAIという分担です

Stable Diffusionを使うなら、img2imgに下絵を読み込んで、denoising strength 0.35〜0.55。形が崩れるならControlNet(Depth / Canny)を強さ0.6前後で一緒に使います。なお、作った画像の利用規約や商用利用の可否は、お使いの生成AIの各サービスの定めに従ってください。

まとめ

LAPIDARIUMは無料で、登録も要りません。石は1つずつしか出てこないので、良い石が出たら棚に納めて、カードにして、誰かに自慢してください。掘るほどに、実在の鉱物を検索して見比べたくなると思います。そうなったら、このツールの勝ちです。

クレジット:3D描画は three.js(MIT License)。暖色・寒色スタジオの環境光には Poly Haven の実写HDRI(CC0)を使っています。フォントは Google Fonts(Shippori Mincho B1 / Zen Kaku Gothic New / Cormorant Garamond)。ツールの制作記の前作はホムペジェネレーター制作記へ。

LAPIDARIUM

世界にひとつの石を、掘りに行く

登録不要・無料。ブラウザだけで動きます。同じ石は、二つとありません。

神吉 修平

神吉 修平SHUHEI KANKI

ALDONIX代表。兵庫県高砂市を拠点に、Webディレクターとして100件以上のサイト制作を指揮。現在は高砂・加古川・姫路エリアで、MEO×AI検索の集客サービス「きゃくくる」を運営。天然石とバンドと古いインターネットが好きで、たまにその方面の道具を作って公開している。

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