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自社ツール 2026.07.24

2001年のホームページを2026年の技術で偽造した話——ホムペジェネレーター制作記

執筆:神吉 修平(ALDONIX 代表/Webディレクション歴100件以上・兵庫県高砂市)

「2001年のホムペを偽造 2026年の技術で再現」——ホムペジェネレーター制作記のイラスト
2001年ごろの個人ホームページをブラウザの上で作れるツール「ホムペ」を作りました。
マーキーはCSSのアニメーション、BGMはWeb Audioと、当時はなかった技術で再現しています。
見た目は2001年のままですが、スマホでも普通に読めます。
できあがるのは50KB未満の1枚のHTMLファイルで、ダウンロードできます。
サービスが終わっても、手元にファイルがあるかぎりページは消えません。

目次

  1. 作ったもの
  2. 動機——消えたホームページのこと
  3. 2001年のホームページは当時の技術ではもう作れない
  4. カウンターは嘘をついている
  5. 存在しないのに懐かしい
  6. 「実際はあらゆる環境に最適化されています」
  7. 1枚のファイルであることの意味

昔、魔法のiらんどで自分のバンドのホームページを作っていました。気づいたときには、置き場所ごと消えていました。

そのことを思い出しながら、2001年ごろの個人ホームページをブラウザの上で作れるツールを作りました。集客のノウハウは出てきません。

作ったもの

作ったのは「ホムペ」という、2000年代前半の個人ホームページを生成するツールです。マーキーが流れて、キリ番カウンターが回って、リンク集には「相互リンク募集中!」。Sorry, This page is Japanese only. も表示できます。あの一文、僕らは誰に向けて書いていたんでしょうね。

フォームに入力すると、隣のプレビューがすぐに動きます。テンプレートは個人日記・ファンサイト・企業サイト・古の個人サイトの4種類。できあがったものは1枚のHTMLファイルとしてダウンロードでき、ついでに88x31の相互リンク用バナーも作れます。

ホムペの編集画面。左のフォームにサイト名や日記を入力すると、右側に星空背景・マーキー・キリ番カウンター付きのホームページがプレビューされている
編集画面。左に入力すると右のプレビューがすぐに動きます。これはテンプレート「個人日記」の初期状態です

動機——消えたホームページのこと

作った理由は特にない、と言いたいところですが、思い当たることはあります。

僕は昔からhotmailを使っていて、MSNのブログを個人ブログとして開いていました。いつのまにかサービスが終わっていて、書き出せる期間もあったらしいのですが、気づいたときにはすべて消えていました。魔法のiらんどでは自分のバンドのホームページを作って、日記だかブログだかわからないものを、けっこう真面目に更新していました。あのころの自分が何を考えていたのか、いま読み返したら相当おもしろかったと思います。読み返せないのですが。

ジオシティーズは2019年に消えました。魔法のiらんども、2020年にホームページの機能を終えています。「工事中」のまま完成しなかった無数のホムペは、工事中のまま消えて、その中に自分の分も入っていました。誰かが悪いわけではありません。ただ、置き場所ごと消えるとは、作っていたころは思っていませんでした。

2001年のホームページは当時の技術ではもう作れない

作りながら気づいたのですが、2001年のホームページは、2001年の技術ではもう作れません。

たとえばマーキー。当時はmarqueeタグ1つで済みましたが、いまこのタグは非推奨で、いつ消されてもおかしくありません。そこで、CSSのアニメーションで文字が流れる動きを再現しています。しかも「視差効果を減らす」を設定している人には流れないようにしてあります。2001年のホームページが、見る人の体調に気をつかうわけがない。この時点で、もう偽物です。

背景の星空や水玉も、当時なら16x16のGIF画像を、どこかの素材屋さんから借りてくるところでした。このツールはSVGをその場で組み立てて、CSSに直接埋め込んでいます。ドット絵のアバターも、12x12の配置図から同じやり方で作っています。素材屋さんへの足あとは残りません。「素材はこちらからお借りしました」のリンクの文化も、リンク先ごと消えた文化の1つ。素材屋さんたちは、どこへ行ったんでしょう。

カウンターは嘘をついている

当時のカウンターは、サーバーのCGIが全員の訪問を数えていました。このツールで作るホームページは1枚のHTMLファイルで、サーバー側の仕組みが何もないので、訪問した人それぞれのブラウザの中で、その人の訪問回数だけを数えています。みんな「自分だけの累計」を見ている。「あなたは000012人目の訪問者です」の12は、あなたが12回見に来てくれた、という意味です。考えようによっては、当時の総数より少しうれしい数字かもしれません。

ただ、最初の数字を盛る機能はちゃんと付けました。当時もみんな下駄を履かせていたので、そこは伝統どおりに。キリ番も踏めます。踏むと「管理人までご一報ください」と出ますが、報告する掲示板はありません。キリ番の踏み逃げは、仕組みの上で全員が必ずします。安心して踏み逃げしてください。

存在しないのに懐かしい

BGMはMIDIファイルではありません。いまのブラウザはもうMIDIを鳴らせないので、代わりにWeb Audioで矩形波をその場で生成して鳴らしています。ファミコンと同じ矩形波なので、耳には当時のMIDI以上に「あのころ」に聞こえるはずです。音源のファイルはどこにもありません。存在しないのに懐かしい。このツール全体が、そういうものだと思います。

「実際はあらゆる環境に最適化されています」

生成されるホームページのフッターには「推奨環境: Internet Explorer 5.0以上 / Netscape Navigator 4.7以上(実際はあらゆる環境に最適化されています)」という一文が入ります。前半は様式美で、後半は本当のことです。

見た目は2001年のままですが、このホムペはスマホで普通に読めます。広い画面では2カラム、狭い画面では1カラムに畳まれて、MENUは折りたたみ式に変わります。マーキーと点滅するNEW!は、OSで「視差効果を減らす」を設定している人には最初から流れません。日記に何を書いてもページが壊れないよう、入力は全部処理してあります。LINEに貼れば、ちゃんとリンクのカードも出ます。当時のホムペをSNSでシェアするという時空の矛盾にも、いちおう対応しました。

ホムペで生成した当社のホームページ。デスクトップ幅ではサイドバー付きの2カラムで表示されている 同じホームページのスマホ幅表示。1カラムに畳まれ、MENUとカウンターが縦に並んでいる
同じ1枚のHTMLファイル。広い画面では2カラム、スマホの幅では1カラムに畳まれます(当社のホムペで撮影)

表示の速さは、たぶん、いま作れるホームページの中でも速いほうです。1ファイル50KB未満で、外への通信はゼロ。HTMLが届いた瞬間に、表示は終わっています。当時のISDNでも一瞬で開けた計算です。Webの技術が20年かけて進んだ結果、いちばん速く表示されるのが2001年の見た目のペラ1枚だというのは、ちょっと笑ってしまいました。

1枚のファイルであることの意味

生成されるホームページは、画像ゼロ、外部ファイルゼロ、通信ゼロの、完全な1枚のHTMLです。皮肉なことに、この仕様なら当時のジオシティーズにもそのまま置けました。容量2MBの世界で、このホムペは50KBもありません。

そして、たぶんここが本音なのですが、1枚のファイルであることには意味があると思っています。どこかのサービスが終わっても、どこかの会社が方針を変えても、手元にファイルがあるかぎり、このホムペは消えません。ダウンロードした瞬間から、それは運営に預けたページではなく、あなたの持ち物です。僕のMSNブログに足りなかったのは、たぶんそれだけでした。

これは昔話ではなくて、いまも同じ構造があります。ページを作れるサービスの多くは、便利な代わりに、原則としてHTMLファイルを外へ持ち出せません。ページの中身はあなたのものでも、ページそのものはサービスの中でしか生きられない。サービスが終われば、ページも終わります。MSNブログやジオシティーズで起きたことと、構造は20年前から変わっていません。

あのころのホームページを作っていた技術は全部なくなっていて、残っているのは見た目の記憶だけでした。その記憶を再現するには、当時なかった技術を総動員するしかない。懐かしさは、復元ではなく偽造でしか作れないんだな、と思いました。ただ、偽造したものを、今度は消えない形で渡すことはできます。20年越しに、それくらいの仕返しはしてもいいと思っています。

RULES

ツールは無料で公開しています。エイプリルフールなどに使えるかもしれません。お願いはフッターのクレジットを残すことだけです。キリ番を踏んでも、ご一報は要りません(笑)。

HOMEPE

あなたのホムペも、作れます

登録不要・無料。ブラウザだけで、あの頃のホームページが1枚のHTMLファイルになります。当社も自社のホムペを作ってみたので、実物はそちらで。

神吉 修平

神吉 修平SHUHEI KANKI

ALDONIX代表。兵庫県高砂市を拠点に、Webディレクターとして100件以上のサイト制作を指揮。現在は高砂・加古川・姫路エリアで、MEO×AI検索の集客サービス「きゃくくる」を運営。天然石とバンドと古いインターネットが好きで、たまにその方面の道具を作って公開している。

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