2001年のホームページを2026年の技術で偽造した話——ホムペジェネレーター制作記
この記事には集客のノウハウも、対策の話も出てこない。ただのネタログです。
目次
作ったもの
うちはMEOとAI検索対策の会社なのに、仕事と何の関係もないものを作ってしまった。「ホムペ」という、2000年代前半の個人ホームページをブラウザ上で生成するツール。マーキーが流れ、キリ番カウンターが回り、リンク集には「相互リンク募集中!」と書いてある。Sorry, This page is Japanese only. も表示できる。あの一文、僕らは誰に向けて書いていたんだろうな。
フォームに入力すると、隣でプレビューが即座に動く。テンプレートは個人日記・ファンサイト・企業サイト・古の個人サイトの4種類。できあがったものは1枚のHTMLファイルとしてダウンロードできて、ついでに88x31の相互リンク用バナーも作れる。
動機——消えたホームページのこと
作った動機は特にない、と言いたいところだけれど、思い当たる節はある。
僕は昔からhotmailを使っていて、MSNのブログを個人ブログとして開設していた。いつのまにかサービスは終了していて、エクスポートできる期間もあったらしいのだけれど、気づいたときにはすべて消えていた。魔法のiらんどでは自分のバンドのホームページを作って、日記だかブログだかわからないものをけっこう真面目に更新していた。あのころの自分が何を考えていたのか、いま読み返したら相当おもしろかったと思う。読み返せないのだけれど。
ジオシティーズは2019年に消えた。魔法のiらんども2020年にホームページ機能を終えた。「工事中」のまま永遠に完成しなかった無数のホムペは工事中のまま消滅して、その中に僕のぶんも入っていた。誰かが悪いわけでもない。ただ、置き場所ごと消えるとは、作っていたときは思っていなかった。
2001年は、2001年の技術ではもう作れない
で、作りながら気づいたことがある。2001年のホームページは、2001年の技術ではもう作れない。
まずマーキー。当時はmarqueeタグ一発だった。今このタグは非推奨で、いつ消されてもおかしくない。だからCSSアニメーションで文字が流れる動きを再現している。しかも「視差効果を減らす」を設定している人には流れないようにしてある。2001年のホームページが閲覧者の体調に配慮するわけがない。この時点でもう偽物。
背景の星空や水玉も、当時なら16x16のGIF画像をどこかの素材屋さんから借りてくるところ。このツールはSVGをその場で組み立ててデータURIとしてCSSに焼き込んでいる。ドット絵のアバターも12x12のマップから同じ方法で生成している。素材屋さんへの足あとは残らない。あの「素材はこちらからお借りしました」のリンク文化も、リンク先ごと消えた文化のひとつ。素材屋さんたちは、どこへ消えたんだろう。
カウンターは嘘をついている
当時のカウンターはサーバーのCGIが全訪問者を数えていた。このツールの生成物は1枚のHTMLファイルで、サーバー側の仕組みが何もない。だから訪問者それぞれのブラウザの中で、その人の訪問回数だけを数えている。全員が「自分だけの累計」を見ている。あなたは000012人目の訪問者です、の12は、あなたが12回見に来てくれたという意味。考えようによっては、当時の総数より少しうれしい数字かもしれない。
ただ、初期値を盛る機能はちゃんと付けた。当時もみんな下駄を履かせていたので、そこは伝統に忠実に。キリ番も踏める。踏むと「管理人までご一報ください」と出るが、報告する掲示板は存在しない。キリ番踏み逃げは、構造上、全員が必ずする。安心して踏み逃げしてほしい。
存在しないのに、懐かしい
BGMはMIDIファイルではない。もうブラウザはMIDIを鳴らせない。代わりにWeb Audioで矩形波オシレーターをその場で生成して鳴らしている。ファミコンと同じ矩形波なので、耳には当時のMIDI以上に「あの頃」に聞こえるはず。音源ファイルは存在しない。存在しないのに懐かしい、というのがこのツール全体の縮図だと思う。
「実際はあらゆる環境に最適化されています」
生成されるホームページのフッターには「推奨環境: Internet Explorer 5.0以上 / Netscape Navigator 4.7以上(実際はあらゆる環境に最適化されています)」という一文が入る。前半は様式美。後半は、本当のこと。
見た目は2001年のままだけれど、このホムペはスマホで普通に読める。広い画面では2カラム、狭い画面では1カラムに畳まれて、MENUは折りたたみ式に変わる。マーキーと点滅するNEW!は、OSで「視差効果を減らす」を設定している人には最初から流れない。日記に何を書いてもページが壊れないよう、入力は全部処理してある。LINEに貼ればちゃんとリンクカードも出る。当時のホムペをSNSでシェアするという時空の矛盾にも、いちおう対応済み。
表示速度はたぶん、いま作れるホームページの中で最速の部類。1ファイル50KB未満で、外部への通信はゼロ。HTMLが届いた瞬間に、表示は終わっている。当時のISDNでも一瞬で開けた計算になる。Webの技術が20年かけて進歩した結果、いちばん速く表示されるのが2001年の見た目のペラ1枚だというのは、ちょっと笑ってしまう。
1枚のファイルであることの意味
生成されるホームページは、画像ゼロ、外部ファイルゼロ、通信ゼロの、完全な1枚のHTML。皮肉なことに、この仕様なら当時のジオシティーズにもそのまま置けた。容量2MBの世界で、このホムペは50KBもない。
そして、たぶんここが本音なのだけれど、1枚のファイルであることには意味がある。どこかのサービスが終わっても、どこかの会社が方針を変えても、手元にファイルがあるかぎりこのホムペは消えない。ダウンロードした瞬間から、それは運営に預けたページではなく、あなたの持ち物。僕のMSNブログに欠けていたのは、たぶんそれだけだった。
これは昔話ではなくて、今もみんな同じ構造の上に立っている。WixやStudioのようなサービスで作ったページは、便利な代わりに、原則としてHTMLファイルを外へ持ち出せない。ページの中身はあなたのものでも、ページそのものはサービスの中でしか生きられない。サービスが終われば、ページも終わる。MSNブログやジオシティーズで起きたことと、構造は20年前から何も変わっていない。
あの頃のホームページを構成していた技術は全部死んでいて、残っているのは見た目の記憶だけ。その記憶を再現するには、当時存在しなかった技術を総動員するしかない。ノスタルジーは復元ではなく偽造でしか作れない。ただ、偽造したものを今度は消えない形で渡すことはできる。20年越しに、それくらいの意趣返しはしてもいいと思っている。
ツールは無料で公開しています。エイプリルフールとかに活用できるかもしれません。お願いはフッターのクレジットを残すことだけ。キリ番を踏んでも、ご一報は不要です(笑)。