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事業づくり 2026.07.24

バンド向けサイト制作プランを初期3万円にするまで——価格を決める前にやった競合調査

執筆: 神吉 修平(ALDONIX 代表)

「バンドサイトは初期3万円 価格は最後に決める」——バンド向けプラン立ち上げ記事のイラスト

バンド向けサイト制作プラン(初期3万円・月1,980円)の価格を決める前に、2026年7月に行った調査の記録です。
サジェストを見ると、検索しているのは依頼したい人より、自分で作りたい人でした。
競合を3つの層に分けると、月2,860円で独自ドメインからチケット管理までそろうサービスがすでにありました。
価格では並ばず、解約後もデータを渡せることと、デザインを一から起こせることの2点を伝えると決めました。
月額は仮の3,000円から1,980円に下げて、月1回の更新代行を含めています。

新しいサービスの価格は、いちばん最後に決めるようにしています。先にやるのは、検索の需要の質を見ること、競合を層に分けて並べること、そして「解約したらどうなるか」まで調べること。

納得感のある費用設定とは

きっかけは、手元にバンドサイトのデザイン案がたまっていたことでした。これを商品にできないかと考えたとき、最初に頭に浮かんだのは「初期3万円・月3,000円なら売れそう」という値段です。

でも、そこで一度止めました。先に値段を置くと、そのあとの調査が全部「3万円を正当化する材料集め」になってしまうからです。競合がもっと安かったら目をつぶるし、需要がなくても気づかないふりをする。だから、値段は仮のまま置いておいて、先に市場の形を調べることにしました。2026年7月、プランを公開する前に丸一日かけてやった調査が、この記事のもとになっています。

調査1:サジェストで需要の質を見る

最初に見たのは、検索ボリュームではなくサジェスト(検索候補)でした。キーワードツールの数字より先に、みんなが何と一緒に検索しているかを見るほうが、需要の「質」が分かります。

FACT — 2026年7月に確認 「バンド ホームページ」のサジェストは「無料」「作り方」「作成」「おすすめ」。「バンド サイト」は「おしゃれ」「作り方」。「制作」「依頼」といった発注系の候補は、ほぼ出てこなかった。

見えてきたのは、この市場にいるのは頼みたい人ではなく、自分で作りたい人だということでした。「バンド ホームページ制作」で検索の上位を取っても、そこに立っている人は少ない。この時点で、集客の中心は、発注しようとしている人より「作り方」を調べている人の受け皿になることだ、と方向が決まりました。売り込みのLPを用意するだけでは、たぶん届きません。

調査2:競合を3つの層に並べる

次に競合です。1社ずつ眺めるのではなく、価格と提供の形で層に分けて、表にしてみました。

層 価格帯(2026年7月時点) 特徴
音楽特化SaaS 月500〜2,860円 テンプレートから選んで自分で構築。上位サービスは独自ドメイン・チケット管理まで対応
テンプレ買い切り 数千〜数万円 WordPressテーマ等を購入して自分で設置・運用
オーダー制作 初期5万〜10万円以上(一般相場は20万円〜) デザインから任せられる。音楽特化をうたう会社は安め

表にして最初に驚いたのは、月2,860円で独自ドメインからチケット管理までそろうサービスが、もうあることでした。仮の「初期3万・月3,000」は、この層と月額がほぼ同じで、初期費用だけ3万円高い。値段で比べられたら勝ち目がありません。ここで一度、振り出しに戻りました。

調査3:アーティスト側の本音と現実的な予算

仕上げに、買う側の実態を調べました。音楽系のメディアの論調は「活動を始めたばかりのバンドにホームページは要らない。SNSとリンクまとめで十分」が主流でした。売る側としては都合の悪い話ですが、これを無視して作ったLPは嘘くさくなると思います。

予算の事情も見ました。バンドはスタジオ代とライブのノルマで、続けるだけで毎月1〜2万円が出ていく活動です。サイトに使える金額は、その残りしかありません。僕自身も昔バンドをやっていたので、ここは調べるまでもなく実感がありました。数十万円のオーダー制作が現実的でないのは、能力の問題ではなく、お金の出ていき方の問題だと思います。

解約時にも柔軟性を持たせたい

値段で並ばないなら、別のところで力を出せる場所を探すことになります。競合の表に「やめたときどうなるか」という列を足してみたとき、方向が決まりました。

月額型のサービスは、解約するとサイトごと消えます。何年分のライブの記録も、ディスコグラフィーも一緒に。一方で当社の作り方は、静的なHTMLを納品する形なので、解約されてもデータ一式を渡せば、別のサーバーでそのまま公開を続けられます。当社が優れているという話ではなく、月額でサイトを預かるやり方とは前提が違う、というだけです。ただ、買う側から見ると、小さくない違いだと思います。

もう1つは、デザインを一から起こせることです。音源を聴いてタイポグラフィと配色から組み立てるやり方は、手間はかかりますが、当社が普段やっていることでもあります。力を出せる場所はこの2つだったので、LPで伝えることもこの2点に絞りました。機能の数や安さは、売りにしないと決めています。

それなら作ってみようと思ってもらえるかどうか

ここまで調べて、ようやく値段に戻りました。初期費用は3万円のまま残しています。バンドマンにとってなじみのある支出の単位、ライブのノルマ1本分に収まるからです。金額そのものより、相手が普段使っている「単位」に乗るかどうかのほうが、高いか安いかの判断を早くしてくれる気がします。

月額は、仮の3,000円から1,980円に下げました。競合が月2,860円なので、同じくらいの金額で数百円だけ高いより、はっきり安いほうが迷わせないと思ったからです。ただ1,980円は、サーバー代だけと考えるとまだ高いので、月1回の更新代行を中身に入れました。バンドのサイトが廃れるいちばんの原因は更新が止まることなので、月額が「止まらないための費用」になるなら、払う意味を説明できます。あとから上のプラン(初期15万円・複数ページ・CMS付き)も足して、3万円が真ん中に来る形にしました。

もう1つ気をつけたのが、ほかのサービスとの切り分けです。当社の通常のWeb制作は10万円からで、同じ流れに3万円のプランを並べると、どちらの値段も説明がつかなくなるので、バンド向けは専用のページに切り出して、本体の料金表には載せていません。

まとめ

やったことを抜き出すと、手順は4つでした。

1つ目は、サジェストで需要の質を見ること。数字の大きさより、何と一緒に検索されているか。発注の言葉がなければ、その市場は「売る」より「教える」から入ることになると思います。2つ目は、競合を層に分けて表にすること。1社ずつ眺めるのではなく、価格帯と提供の形で並べると、自分がどこと比べられるかが見えてきます。3つ目は、表に「やめたときどうなるか」の列を足すこと。仕組みの穴は、契約のときより解約のときに見つかることが多いです。4つ目に、値段は最後に、相手が普段使っている支出の単位に合わせて決めます。

今日できることを1つ挙げるなら、自分の業種の名前でサジェストを見て、競合3社の解約の条件を調べてみてください。両方あわせて30分ほどで終わりますし、たぶん1つは意外な発見があると思います。

この調査から生まれたものはバンドのホームページ制作で公開しています。自社のサービスの見せ方や値段の決め方についての相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。